column マルチアセット運用とは?複数資産に分散投資するメリットと考え方

「分散投資が大切」とよく耳にする一方で、「なぜ必要なのか」「本当に効果があるのか」と疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。
 

分散投資とは、投資先をひとつに集中させず、複数に分けることでリスクの偏りを抑える考え方です。なかでも、株式や債券など特性の異なる資産を組み合わせて運用する「マルチアセット運用」は、市場環境の不確実性に備える手法として注目されています。
 

本コラムでは、マルチアセット運用に焦点を当て、そのメリットや留意点、不確実な市場環境における意義について解説します。

 

マルチアセット運用とは|なぜ注目されるのか
 

地政学リスクの高まりや物価上昇、金融政策の変化などにより、金融市場を取り巻く環境は常に変化しています。その先行きを正確に見通すことは容易ではありません。このような市場環境では、投資先を複数に分ける分散投資の考え方がより重要になります。

マルチアセット運用とは、分散投資の考え方に基づき、株式や債券など特性の異なる複数の資産を組み合わせて運用する方法です。特定の資産が大きく値下がりした場合でも、その影響を和らげ、ポートフォリオ全体の値動きを抑える効果が期待できます。

 

マルチアセット運用のメリット|期待される2つの効果
 

マルチアセット運用には、ポートフォリオ全体の値動きを安定させやすくする効果に加え、投資家の心理面を支える役割も期待できます。

 

ポートフォリオ全体の値動きを安定化させやすい
 

歴史的に見ると、景気後退などの局面では、債券は株式と逆の値動きを示す傾向があります。株式のリターンが悪化する一方で、債券のリターンが相対的に改善するため、ポートフォリオ全体の下振れを抑える「クッション」のような役割を果たします。

また、債券リターンの重要な源泉である安定的なインカム収益には、株式の価格変動が大きい局面において、ポートフォリオ全体の変動を和らげる効果が期待できます。

 

感情的な投資行動を抑えやすい
 

心理的な側面も見逃せません。多くの投資家は、相場が好調なときには「自分は長期投資家で、多少の変動は気にならない」と考えがちです。しかし、市場が急落すると、恐怖心から冷静な判断が難しくなり、下落局面や底値に近い水準で資産を売却してしまうケースも少なくありません。

株式に偏り過ぎないポートフォリオを構築することで、感情に左右された非合理的な投資行動を回避しやすくなる点も、マルチアセット運用の重要な意義のひとつといえるでしょう。

 

マルチアセット運用の留意点|分散効果が発揮されにくい局面もある
 

マルチアセット運用は、先行きが不透明な市場環境と向き合うための選択肢のひとつです。一方で、すべての局面で期待どおりの分散効果を得られるわけではありません。市場環境によっては、通常とは異なる値動きが生じ、分散効果を実感しにくくなることもあります。

2022年は、その一例です。この年は、原油価格の上昇を背景に株式と債券が同時に下落するという、分散効果が発揮されにくい相場となりました。

当時は、エネルギー価格の急騰を起点とする物価上昇圧力が強まり、特に米国では中央銀行が急速な金融引き締めを実施しました。金利の急上昇は、株式には企業収益や株価評価への懸念をもたらし、債券には価格下落という形で影響しました。その結果、両資産が同時に調整する展開となりました。

しかし、このような局面があったとしても、マルチアセット運用が有効ではないと結論づけるのは適切ではないでしょう。

 

マルチアセット運用の役割|市場環境の不確実性に備える
 

マルチアセット運用の役割を考えるうえでは、その時々の市場環境にも目を向けることが重要です。

 

2022年と現在では市場環境が異なる
 

2022年は分散効果が発揮されにくい局面となりました。ただし、当時の状況を現在にそのまま当てはめることはできません。

確かに、原油価格の上昇など、現在と共通する要素はあるものの、市場環境には重要な違いがあります。当時は、コロナ後の緩和的な金融政策から、物価上昇抑制を目的とした引き締め政策へと大きく舵を切る転換点にあり、利上げの幅もスピードも非常に急速でした。一方、現在はすでに政策金利が高い水準にあるため、仮に引き締め的な政策が再び行われたとしても、政策金利引き上げのペースや変化幅は、当時ほど急激にならない可能性があります。

また、2022年は歴史的な低金利環境からの転換期であったため、債券のインカム収益も限定的でした。現在は、債券利回りが以前より高い水準にあり、一定のインカム収益によって価格変動の影響を和らげる役割を果たすことも期待できます。

 

マルチアセット運用は不確実性を前提とした手段である
 

景気動向や金利政策、物価変動など、市場を取り巻く環境は常に変化しています。そのため、将来の市場環境を正確に予測することは容易ではありません。

特定の年や局面だけを切り取って評価するのではなく、長期的な視点からマルチアセット運用の役割を考えることが重要です。

マルチアセット運用は、短期的な市場の動きを予測するのではなく、将来の不確実性を前提に、特性の異なる資産を組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクバランスを整えるための考え方です。

将来を正確に予測することが難しいからこそ、特定の資産に過度に依存せず、複数の資産に分散して投資することが重要になります。マルチアセット運用は、不確実性と向き合いながら長期的な資産形成を支える有効な手段のひとつといえるでしょう。