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山崎 俊輔
長期投資家に必要な3つの経験値「儲かる経験」「損する経験」もうひとつは何?
山崎 俊輔
フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー

長期投資家の力となる「経験値」


多くの物事では、経験値が多い方が力となります。テレビゲームも最初のプレイではすぐゲームオーバーとなったものが、何百回とプレイすればすいすいと敵を避け、倒し、ゴールに向かえるようになります。


初めての彼氏、彼女ができたときは何をやっても緊張しますし失敗だらけです。メッセージの返事がすぐ来ないため不安にかられたりします。しかし何カ月かつきあってみれば、時間の経過に従い余裕が生まれ落ち着いてデートができるようになります。残念ながら別れることになったとしても、その失敗経験は次の交際に活かされることでしょう。


投資においても同様です。誰もが一度は「初めての投資」の門をくぐりますが、最初は売る予定もない株価の上下動に一喜一憂し、毎日あるいは毎分のように価格をチェックしたりします。


経験豊富な個人投資家は、いちいち株価をチェックしなくても平気になりますが、彼らも最初は「一分ごとに一喜一憂する投資初心者」だったのです。


中長期のスパンで投資を考えていくことを、個人投資家にはおすすめしたいのですが、具体的にはどんな「経験」を積んでいくといいでしょうか。


今回は、ぜひとも経験しておきたい「3つの経験」を紹介します。


 


「儲かる経験」と「損をする経験」が投資家を成長させる


1つめは、「儲かる経験」です。誰でも投資をする以上はお金を増やしたいと思っています。リスクを取ってチャレンジをした以上は、お金が増えてほしいですし、実際に株価や投資信託の基準価額が上昇すれば嬉しいものです。購入時より上昇したあとで売却をすれば「運用益」を得ます。


成功体験はぜひとも得てほしい投資家の1つめの経験値です。


2つめは、失敗、つまり「損をする経験」です。短期的には株価は上下動します。経済は好不況の波があります。自然災害や地政学上のリスクが生じて想定外の下落に見舞われることもあります。


値下がりしてマイナスが出た、という失敗の経験は避けたいものですが、完全に排除することはできません。むしろ失敗した経験をもたない個人投資家というのはビギナーズラックなのか、経済の成長が果実になったのかが分かっていません。


実は失敗したことのない投資家のほうが危うさがありますし、投資で失敗をしたっていいのです。


もちろん、大失敗となると投資を続けようという意欲もわかなくなりますし、損失も被るわけですから、「小さな失敗経験」とするといいでしょう。


具体的には投資デビューをするときほど、投資金額は少なめにします。投資信託であれば最低価格が数百円から数千円でスタートすることもできます(証券会社や投資信託ごとに条件は異なります)。


例えば月100円の積立投資で全世界の株式市場に投資をしたとすれば、30%の大暴落がやってきても金額的なダメージは大きくならずにすみます。


投資未経験者ほど投資金額を抑えてデビューをするようにしてください。そして「小さなつまずき」を将来のための経験値として蓄えていくのです。


 


そしてもうひとつの大切な経験「値下がりの後、値上がりして儲かる経験」


最後にもうひとつ、3つめの経験とはなんでしょうか。


それは、投資をした後、値下がりする局面に陥っても売らずに乗り越え、値上がりに転じてマイナスを回復、プラスになってから売却をし、利益を得た経験です。言ってみれば「値下がり後、儲かる経験」というところでしょうか。


ただ単に「儲かる経験」というのと異なるのは、一度値下がりがあって含み損を抱えた期間があるということです。買ったその日から値上がりがあった儲かる経験より、「下がってから儲かる経験」のほうが価値があるのです。


リーマンショックやコロナショックといわれる暴落時期が10年に数回はやってきます。20~30%の下落幅を記録することもしばしばです。このとき、値下がりしたからと売って損失確定を繰り返していては、投資家としても成長できませんし、資産も増やすことができません。


まだ売却していない資産が時価で値下がりしている状態にあることを「含み損」を抱えているといいます。10万円で購入した投資信託が8万円まで下がったとしたら2万円の含み損ということです。


この含み損、ここで売却すれば8万円の現金が手元に残り2万円の損失が確定します(手数料は除く)。


しかし、この後投資対象が回復に転じたのであれば、この含み損は徐々に少なくなり、プラスマイナスゼロになったり、さらに値上がりして「含み益」に転じたりします。


10万円に戻るまで待って売れば損はありませんし、それ以上回復してから売れば、どんなにマイナスの時期が合ってもプラスで終わったことになります。


中長期的な経済の回復を期待できるのであれば、短期的な下落時はあえて売らず、回復を待つこともまた投資家に求められる経験なのです。


 


長期投資家は社会の成長、企業の発展を信じて「時間を与えてあげる」


どんな企業も、売り上げを落とし、赤字に転落したいわけではありません。また、何らかの形で社会の役に立たなければ、自分の会社の売り上げは伸びないことも知っています。


それでも、企業に厳しい冬の時代が訪れることはあります。世界全体の景気が低迷する時期があったり、早すぎる新技術が世の中に受け入れられなかったりすることがあります。事業の拡大にチャレンジしたとき、残念ながらマーケットがピークアウトしてしまうこともあります。


それでも、たくさんの企業の挑戦が社会を豊かにしてきました。トヨタ自動車がプリウスにチャレンジしなければ環境負荷を低減させたEV車のトレンドも生まれなかったでしょう。任天堂にソニーが挑んだことで、ゲーム機市場は拡大、競争が進化を生みました。アップルがiPhoneを開発したこと、アマゾンがEC(電子商取引)サイトを育てたこと、いろんな挑戦が社会を発展、豊かにさせていくのです。


しかし、どんな大企業にも新参の企業にも冬の時代があります。長期投資家は投資資金を提供するだけではなく、企業が挑戦をする「時間」も提供してあげてほしいと思います。


下がってから値上がりするとき、時間がかかることがあります。リーマンショックから世界経済や日本経済が回復するのには5年くらいの時間が必要でした。値下がり後、再値上がりで儲かる経験には時間が必要なのです。


私自身、初めて投資体験したあとすぐ、2001年のITバブル崩壊に見舞われ、大きくマイナスとなったことがあります。しばらくは持ち続けてみたのですが市場の回復を待てずに10%くらいの損を出したまま売ってしまいました。あのとき売らずにいたら、そのときの2倍以上に価格は上昇していたはずです。


しかし、その経験はムダにはなりませんでした。むしろ「あそこで売らずにガマンできれば損はなかったのだ」という経験を活かし、リーマンショックのときにはどんなに値下がりしても売らずにすみました。そして積立投資を継続することができました。今、私のiDeCo口座の成績は年7%以上の運用収益をあげていますが、当時慌てて売らなかったことにより、大きなプラスを手にしています。「経験」はムダにはならなかったわけです。


 


3つの経験を重ねて強い投資家にステップアップ


さて、個人投資家が手にして欲しい経験を3つまとめてみました。実はこの3つの「経験」は投資をした金額とは無関係に獲得することができます。


例えば「損をする経験」について100万円の投資が80万円に下がって手放した苦い経験であっても、10万円の投資が8万円に下がって手放した経験であっても、どちらも「損をした経験」としてあなたに刻まれるということです。


「儲かる経験」については20万円の儲けでも2万円の儲けでも、成功体験としてあなたに刻まれますし、どちらもうれしい利益です。やはり損をする経験を小さくしたいところです。


それならば、「金額としての損」は小さいほうがいいでしょう。投資初心者が最初から高額の投資をしなくてもいい理由は実はそこにあるのです。


また経験値が浅いことを自覚しているなら、最初から一気に高額をつぎ込む必要はありません。「投資をするお金がない」とよく言われますが、スタートはゼロ円からでいいのです。


たとえばつみたてNISAやiDeCoを活用すれば、必ずゼロ円からのスタートになり、多くても月数万円程度の積立枠になります。月数千円程度でもかまいません(iDeCoは月5000円以上、NISAは金融機関の取り扱い商品による)。


3つの投資経験を得られたとき、あなたは投資家として大きなステップアップをしたことになります。次にやってくる「○×ショック」のとき、焦らずに投資を続けることができるでしょう。


あなたの一生の財産となる3つの投資経験を、まずは積んでみてください。



山崎 俊輔 フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー。1972年生まれ。中央大学法律学部法律学科卒業。企業年金研究所、FP総研を経て独立。企業年金連合会調査役として確定拠出年金の調査、制度改善要望等を担当。老後の年金や退職金制度も考慮したトータルな資産運用に関する執筆、講演多数。1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。


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