個人投資家の間でパッシブ運用の人気が高まっています。インデックスファンドやETFを通じて市場全体に投資するこの手法は、以下のような理由から「合理的な選択」として広く支持されています。
1) 運用コストが低い
2) 多数の銘柄に分散投資できる
しかし、こうした特徴の陰で、見落とされているリスクはないでしょうか。今回はパッシブ運用の意外な落とし穴と、アクティブ運用の有効性について考えたいと思います。
足元の市場環境で注目すべき変化として、「市場の集中化」があげられます。マグニフィセント7*などに代表される米国IT株の上昇により、世界株インデックスにおける米国株の比率やITセクターの比率が大きく上昇。銘柄ベースでも、少数の大型株に資金が集中することで、指数のトップ10銘柄の比率は2025年9月末で24.5%と前回のピークである2000年3月末の16.2%を大きく超え、過去最高水準に達しています。
このように、パッシブ運用では「分散を意図して投資したものの、実は中身は集中している」という逆説的なリスクが生じており、パッシブ運用の構造的な弱点が顕在化しつつあります。
パッシブ運用は、指数に連動して大きくなった銘柄の投資比率を自動的に高めてしまうため、市場の偏りを調整することはできません。一方、アクティブ運用は、市場環境の変化に応じて将来の経済構造を見据えた投資判断が可能であり、必要に応じてリスクを抑えることが可能です。
自動車の運転に例えれば、パッシブ運用は過去の成功企業に機械的に投資する「後ろ向きの運転」、アクティブ運用は将来の変化を見据えて機動的に対応する「前向きの運転」とも言えるでしょう。投資においても、運転を前向きに行うべきか後ろ向きに行うべきかは明らかです。運用コストばかりに着目するのではなく、戦略の柔軟性や投資目線が過去志向か未来志向かなども考慮することが重要です。
すべてのアクティブファンドがインデックスのリターンを上回るわけではありません。しかし、優れたアクティブファンドは、市場全体を機械的に買うよりも、リスク・リターンの両面で合理的な選択肢となり得ます。
現在のように市場の集中化が進み、指数の構成が偏っている局面では、アクティブ運用の価値は一層際立ちます。パッシブ運用のメリットだけでなく、限界も理解し、アクティブ運用の可能性にも目を向けることが、これからの資産形成において鍵となるのではないでしょうか。
*アルファベット、アマゾン・ドットコム、アップル、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラの大型テクノロジー7銘柄の総称。