Categories
column
ピーマンとパプリカ

ピーマンとパプリカは、どちらもナス科トウガラシ属に分類される野菜ですが、色や果肉の厚み、味わいは明らかに異なります。品質を比較する際には、ピーマンはピーマン同士、パプリカはパプリカ同士で比べるのが自然であり、ピーマンとパプリカを並べて「このピーマンは、このパプリカより質が高い」と評価することはあまり意味がありません。


金融商品も同様で、性質の異なるものを一括りにして比較すると、誤った結論を導くリスクがあります。しかし、実際には似ているようで異なる商品が、同じカテゴリーとして横並びに比較されることも少なくありません。


例として、世界株式インデックスの違いが挙げられます。「世界株式」と一言でいっても、以下の様に複数の異なるインデックスが存在します。


  MSCI ACWIAll Country World Index):先進国+新興国を含む全世界株式
  MSCI World:先進国株式のみ
  MSCI Kokusai:日本を除く先進国株式


アクティブファンドは、それぞれ異なるインデックスをベンチマークに運用されていますが、MSCI ACWIをベンチマークとするファンドと、MSCI Worldをベンチマークとするファンドを「世界株式ファンド」として一括りで比較するケースも見られます。このような比較は、ピーマンとパプリカを同列に評価するのと同じで、正確な判断を妨げます。


バランスファンドも、株式と債券の比率や採用する資産クラスがファンドごとに異なります。実績だけを見て比較すると、株式比率の高いファンドが有利に見えますが、それはリスクを取っている分リターンが高いだけかもしれません。逆に債券比率の高いファンドは、安定性があり、リスクが抑えられる傾向にあります。


ベンチマークや資産配分はファンドごとに異なり、各ファンドがどれだけ優れた実績を実現出来ているかを横比較していく事は容易ではありません。この様に類似する金融商品の比較は、意外と単純ではないということが分かります。


では、どの様に金融商品を選択すべきでしょうか。個々の戦略を追いかけることよりも重要なのは、金融商品の「生産者」である運用会社の質を見極めることです。ベンチマークに対して安定的に超過収益を実現できていること、長期的に持続可能な運用体制を確立していること、各戦略に対する高いコミットメントを有していること——これらの項目を満たしている運用会社は、信頼に足る存在であり、長期的にも優れた運用実績を残していく可能性が高いと判断できます。


ピーマンとパプリカの質を直接比べるのは難しいですが、生産者の信頼性を確認すればピーマンでもパプリカでも安心して購入することが出来ます。金融商品も同様で、「誰が運用しているか」に重きを置いて選択していくことが、長期的な投資成果につながるのではないでしょうか。