「将来、マーケットが下落するタイミングが事前に分かっていたら…」 投資家であれば、一度はそんな思いを抱いたことがあるのではないでしょうか。暴落に向けて資金を貯め、底値でまとめて投資できれば、誰もがうらやむようなリターンを得られるはず。そんな想像をするのも無理はありません。
しかし、仮にその夢が実現したとしても、積立投資には勝てないかもしれません。今回は、過去50年間の市場データをもとに、「完璧なタイミングで底値買いした場合」と「毎月コツコツ積立投資を続けた場合」の投資成果を比較し、積立投資の有効性を検証したいと思います。
毎月1万円の投資資金があり、50年間で合計600万円を投資すると仮定します。投資対象は全世界株式インデックスです。この条件下で、2つの投資方法の成果を検証したいと思います。
① 底値買い:暴落が起きるタイミングを事前に知っているという前提で、暴落が起きるまで資金を貯め、暴落時に一気に投資する。その後、また資金を貯め、次の暴落時に投資を行うというプロセスを繰り返す
② 積立投資:毎月1万円の積立投資
過去50年でマーケットが大きく下落したのは5回。暴落を事前に察知し、暴落が起きるまで貯めてきた資金を底値でまとめて投資できたとしたらどうなるでしょうか?この場合、600万円の投資は5,626万円に成長します。驚くべき投資成果です。マーケットのタイミングを完璧にとらえ暴落の底値で買えているので当然の結果とも言えるでしょう。
※底値は、当該月の終値が前後2.5年を含めた5年間の中で最も低い水準であった場合に認定。底値が来るまでは資金を蓄え、底値が到来した時点で一括で投資を行った場合の投資成果をシミュレーション。なお、最後の底値以降に蓄えた金額は最終的な評価額に含まれる。
※投資対象は2011年9月以前はMSCI ワールド・インデックス、それ以降はMSCI AC ワールド・インデックスを仮定。
期間:1975年1月末~2024年12月末
出所: LSEG、キャピタルグループ
一方で、マーケットの上下に関係なく、毎月1万円を淡々と積み立てた場合はどうでしょうか?結果はなんと、8,569万円。底値買いを大幅に上回る成果となりました。
※毎月1万円を定期的に投資した場合の投資成果をシミュレーション。
※投資対象は2011年9月以前はMSCI ワールド・インデックス、それ以降はMSCI AC ワールド・インデックスを仮定。
期間:1975年1月末~2024年12月末
出所: LSEG、キャピタルグループ
なぜこのような結果になるのでしょうか?底値買いの成果が積立投資の成果を下回る理由は、暴落を待って資金を貯めている間に相場の上昇が続いてしまい、待ちに待った「底値」は必ずしも過去の水準よりも下がるとは限らないためです。
仮に底値でなくても、淡々と投資を行った方がより早期に投資を行う事ができ、長期的な市場の上昇の恩恵を受けやすい。つまりは「いつ買うか」よりも「どれだけ長い期間市場にいるか」が、投資成果に大きな影響を与えるという事です。長期的な株式市場の上昇を信じるのであれば、投資可能な資金はできる限り早期に投資をしていく事が重要だという事が分かります。
市場の将来を完璧に予測し続ける事は極めて困難です。また、完璧な予測をしたとしても投資方法を間違えれば最善の成果を生み出す事はできません。投資はタイミングではなく時間。タイミングを図ってマーケットの上下に一喜一憂するのではなく、時間を味方につけて愚直に積立投資を続ける事が、投資家にとって最も有効かつ堅実で再現性の高い投資戦略と言えるのではないでしょうか。