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山崎 俊輔
自分らしく生き、自分らしくリタイアするために「投資」をしてみよう
山崎 俊輔
フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー

~なぜ若い世代がFIREを目指すのか~


人生100年時代がやってくる 働く時間も、老後も長くなる


皆さんは「人生100年」という言葉を一度は耳にしているでしょう。織田信長の時代は「人生50年」、ちょっと前までは「人生80年」という言葉が私たちの一生をあらわすイメージでしたが、近年の医療技術の進展や健康管理、衛生観念の発達などは、私たちを100年生きる時代へ導きつつあります。


今現在、65歳まで元気であった人たちの残りの人生(平均余命という)は男性20年、女性25年です。つまり男性なら85歳、女性は90歳が平均的な人生ということです。これにおおむね5年を加えると4人に1人が元気な年齢となり、男性約90歳、女性約95歳まで元気ということになります。


日本人の平均寿命は予想を上回るペースで延び続けており、さらにいくつかの病気が克服されれば(例えばガンは2040年には克服できる、という将来予測があります)、もっと長生きする時代がやってくることは間違いありません。


人生100年時代がもし到来したとすれば、それは働く時間も老後も長くなるということです。引退年齢が65歳のまま老後だけ35年になるのではなく、70歳リタイアあるいは75歳リタイアの社会になり、かつ今よりも長い老後を20~30年過ごすということです。


人生50年時代には老後という概念がそもそもありませんでした。人生80年時代には、成人になって働き始めて約40年働き、20年ほどの老後を楽しむ時代になりました。これがさらに10年ずつ伸びるようなイメージです。


長生きをする時代となれば、健康な時間も長くなりますので、より長く働き、より長い老後を過ごす時代になっていきます。しかし、ただ言われるがままに働き続けるだけが私たちの人生でしょうか。


死ぬまで働かされる、という発想の時代ではない
どうすれば自分のやめ時を自分で決められる?


私たちは今まで、「定年退職年齢(60歳以上で会社が定める)」や「公的年金の受給開始年齢(標準は65歳)」を自分の引退年齢と当たり前のように考えてきました。公的年金をもらい始めれば最低限の定期収入は確保されますから、そこまでは働く、という発想です。


しかしこういう発想は自分のやめ時を自分で決めていないという考え方です。経済的な安定がないので、働き続けなければいけないという考え方だからです。


自分で自分の引退年齢を決めることができる働き方もあります。たとえば「プロスポーツ選手」が思い浮かびます。大投手の引退記者会見をニュースでみて、熱心に応援をした活躍の日々を思い返すこともあるでしょう。


しかし、これはプロとしての契約が維持できなかったための引退であって、必ずしもその後が悠々自適であるとは限りません。引退後のプロ選手がセカンドキャリアに苦労している話はときどきテレビでも紹介されています。


できれば、経済的な安定を確保したうえで、自分で自分のやめどきを決められるようになってみたいものです。


一見すると夢物語のように思えますが、実は今、私たちにも可能な時代になっています。最近、流行しているお金のキーワードにFIREというものがあります(Financial Independence, Retire Earlyの略)。経済的な安定を早期に確保することで、自分のリタイア年齢を自由に決められるようにしよう、というチャレンジです。


こうした取り組みが注目を集めているのは、人生100年時代に新しい生き方を考える人が増えている証ではないかと思います。


そして、日本でも50歳前後でリタイアしても困らないお金を投資で作り、定年退職にこだわらずリタイアする人が出始めています。


投資を通じて「人生の自由」を手に入れてみよう


自分の人生の主導権を自分で握りたいと思うのであれば、必要となってくるのは資産形成です。まとまったお金があれば、あなたは自分の人生を自分で決めることができるようになります。


100万円があればブラック企業から飛び出して転職活動を3カ月することができます。同じ100万円は、新しい知識や技能を身につけるための学び直し(リカレント教育)の軍資金となり、未来のキャリアアップにもつながります。


1000万円があれば、住宅ローンの借金を大きく減らすことができます。人生における最大の制約を小さくできれば、あなたの行動の自由が増えます。


そして2000万円があれば、老後の不安はなくなります。いわゆる「老後に2000万円」は公的年金に上乗せして趣味や娯楽のために使う予算を指しており、これを早期に確保できれば老後の安心を得て気持ちよくリタイアできます。


そしてそれ以上の資産を確保すれば早期リタイアも可能になっていきます。先ほど紹介したFIREは、まさにそうしたマネープランのことです。


このとき、ぜひ活用してみたいのは「投資の力」です。経済の成長にあなたのお金を投じることで、今すぐに必要とはしていない資金を成長させることができます。国内外に分散投資を行えば、年4~6%の運用利回りも十分に可能です(20年の積立投資をした場合。金融庁つみたてNISA資料による)。


預貯金の超低金利と比べれば、あなたのお金を大きく増やすことになります。仮に毎月3万円の積立を行い、20年後に720万円の元本を積み上げたとします。年0.01%の定期預金利息しかなかったとすれば、720万円の元本はたった7000円しか増えません。


これがもし、投資の力を借りて年4.0%の成績を得たとすれば、20年後には約1100万円まで増えています。運用が好調に推移して年6.0%となれば約1386万円とほぼ倍増します。


個人も投資信託を活用することによって、広く経済に投資をする資産運用が可能になってきています。


そして、お金が増えるほどに、私たちの未来の選択肢が増えていくことになります。


借金人生か、資産形成の人生か、あなたのお金を「マネーシフト」させてみよう


日本に「人生100年時代」という言葉を普及させたのは「ライフシフト」という一冊の本です。そこでは100年を生きる時代が到来するときやってくる大きな社会変化、個人のライフプランのステージ変化が説かれています。


私はこれをファイナンシャルプランナーの目線で考えてみたとき、100歳人生時代に必要となるのは「マネーシフト」だと考えています。


今までの世代は、先に借金をして消費し、後からその返済をしてきました。重すぎる住宅ローンの返済や教育ローンもそうした借金のひとつです。返し終わるまでリタイアはままなりませんし、結果としてそれは年金をもらう年齢まで働くしかない、という人生につながっていました。


あなたがもし、働き方や稼ぎ方、人生との向き合い方を変えてみたいと思ったら、赤字の家計、借金を前提とした人生から脱し、資産形成を先行させる生き方に「マネーシフト」してみてください。


そして積極的に稼ぎ、貯め、積み上げたお金は投資の力を用いてさらに増やしていくのです。


優れた企業が世界をより便利で豊かなものとしたとき、あなたの投資資金はそうした企業の成長のエンジンとなります。そして、企業の成長とともにあなたの資産価値も高まっていきます。


きっと、そのお金は、あなたが自分らしく生き、自分らしくリタイアするチャンスを手に入れる力となってくれるはずです。投資とともに、豊かな未来を切り開いてみませんか。



山崎 俊輔 フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー。1972年生まれ。中央大学法律学部法律学科卒業。企業年金研究所、FP総研を経て独立。企業年金連合会調査役として確定拠出年金の調査、制度改善要望等を担当。老後の年金や退職金制度も考慮したトータルな資産運用に関する執筆、講演多数。1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。


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