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経済・市場
電気自動車:持続可能な世界を目指して
ジェイソン・ チャン
株式アナリスト
ダニエル・ ジェイコブス
債券アナリスト
ピヤダ・ ファナファット
株式ポートフォリオ・マネジャー
ジュリー・ ディクソン
インベストメント・ディレクター
キーポイント
  • EVは収益化の目途が立ってきた。原材料価格が高騰する中でも、技術革新やバッテリー価格の下落により相殺されることが期待されている。
  • 一方で課題は残っている。半導体不足により新しいサプライチェーンへのボトルネックとなる可能性があり、充電スタンド確保に向けた戦略的投資が必要。
  • 既存の自動車メーカーもEVの増産に取り掛かっている。しかし、テスラのような地位を確立した企業に追いつくにはまだ時間がかかる。

最近、電気自動車(EV)販売が加速している背景


ジェイソン・チャン:販売数急増の背景には、主に欧州および中国での規制と助成金の存在があります。例えば欧州では、2020年に自動車メーカーに対する排ガス規制が厳格化されたことを契機に、EVの生産と販売が加速しました。さらに、欧州の各国政府はコロナ禍から経済を回復させるための景気刺激策の一環として、EVへの助成金を増額しました。2021年までの2年間のEV普及率は、欧州では4%から20%と4倍に、中国では5%から15%へと3倍に急上昇しました。米国のEV普及率は約5%と出遅れていますが、今後は規制の強化が見込まれます。2030年までに、EV普及率は欧州で60%、中国で70%、米国では約50%になることが予想されています。1


ダニエル・ジェイコブス:欧州では、これまで高級車が自動車販売を牽引してきました。EVの購入者層は、高額の初期費用を負担でき、多くは既に別の自動車を所有している層でした。しかし、価格の下落や充電インフラの改善のほか、特にSUVなどの人気車種で選択肢が増えたことにより、購入層が広がってきています。EVの一般的な普及には、従来のICE(内燃エンジン)車のように安価で維持コストが安く、便利であることが重要となります。業界全体としてそのような状況に近づいてはいるものの、まだ課題は残っています。


国・地域別EV普及率の推移

EVの販売台数シェア (右軸)

Electric Vehicles Charging Towards a Sustainable World

出所:IEA (Global EV Outlook 2021) 、キャピタル・グループ

EV価格が従来の自動車と同程度となるには


ジェイソン・チャン:ICE車よりもEVの価格が高い主因は、バッテリー価格にあります。過去10年間でバッテリー価格は大幅に下落しました。しかし、最近では原材料価格の高騰により、一進一退を繰り返しています。それでも、2025年までにコンパクトEVの販売価格はICE車と同水準になる見込みです。小型のバッテリーパックを搭載する小型EVの価格は既に経済的な水準まで下がっています。例えば、中国で最も売れているEVである宏光ミニEV(Wuling Hongguang MINI EV)の2021年販売台数は約40万台でした。2バッテリーパックはテスラModel 3の60 kWhと比較するとわずか10kWhに過ぎませんが、バッテリー価格は約1,500米ドルに抑えられています。そのため、販売価格は約5,000米ドル程度(助成金付き)で、比較対象となるICE車の価格を下回っています。


ピヤダ・ファナファット:リチウム、コバルト、ニッケルを含め原材料価格が急騰したことで、バッテリー価格の下落ペースは鈍化しています。ただし、今後の技術革新により原材料価格の上昇分は相殺できると考えています。中国では、NCM(ニッケルコバルトマンガン酸化物)電池から低価格なLFP(リチウムリン酸鉄)電池に回帰することで多様化を図っています。現在LFP電池は低コストのため、市場の半分以上を支配しています。LFP電池は、価格優位性を活かし、エントリーレベルのEV向けバッテリーとして活用され始めています。


1.出所:IEA(Global EV Outlook 2021)


2.2022年1月現在。出所: Inside EVs.


 



ジェイソン・チャン  株式アナリスト。アジアおよび欧州の自動車・自動車部品、アジアの醸造・蒸留業を担当。運用経験年数15 年、在籍年数15 年。CFA 協会認定証券アナリスト。香港オフィス在籍。

ダニエル・ジェイコブス  債券アナリスト。自動車、欧州の保険セクターの調査を担当。経験年数14 年。現職以前はリサーチ・アソシエイトとして勤務。ブロードストーンでインベストメント・アナリスト、ショア―・キャピタルでインベストメント・マネジャーとして勤務。CFA 協会認定証券アナリスト。

ピヤダ・ファナファット  株式ポートフォリオ・マネジャー。株式アナリストとして、アジアのエネルギー、セメントおよび小型株の調査を担当。経験年数19年。JP モルガン (香港) の財務部門に勤務した他、UBS (タイ) において株式アナリストを務めた。

ジュリー・ディクソン  インベストメント・ディレクター。経験年数28 年。アッシュモア・グループ、アビバ・インベスターズにおいてクライアント・ポートフォリオ・マネジメント・ヘッドを務めた他、アクサ・ローゼンバーグ、メロン・グローバル・インベストメンツ、バークレイズ・グローバル・インベスターズおよびメリルリンチに勤務。


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