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機関投資家の皆様へ
インフレ下の金融政策と債券市場における 投資機会
アンドリュー・コーマック
債券ポートフォリオ・マネ ジャー
キーポイント
  • バリュエーションは全般に割高であり、投資家は警戒心を強め、利 回り追求のアプローチを見直す必要がある
  • 米国の短期インフレ見通しは依然として不透明。長期的なインフレ は抑制される見通し
  • 多くのエマージング債券の実質利回りは魅力的な水準であり、イン フレが一過性であると判明した場合は投資妙味が増す可能性も
  • このような市場環境では、柔軟な投資戦略が有効

米国のインフレに対する考察


インフレは進んでいますが、一旦経済活動を停止し、消費者に現金をばらまいた 後で経済活動を再開したことを考慮すれば、想定の範囲内であると考えます。問 題は、今回のインフレが一過性のものなのか、もしくは持続的なものかという点 です。それには経済を供給面と需要面に分けて考えることが重要です。


短期的には、供給が制限されているなかで非常に強い繰延需要が積み上がってい ます。この状況がインフレを押し上げ、FRB(米国連邦準備制度理事会)にとっ て頭の痛い状況となっています。深刻な景気後退に陥りましたが、家計と企業の バランスシートは健全なため、その期間は過去の景気後退局面と比べて短いもの でした。


もう 1 つの重要な点は、新しいオミクロン変異株がインフレに与える影響です。 当局が行動制限を強化し改めて在宅勤務政策を実施する場合、昨今の労働市場の 改善が滞り、サプライチェーンがさらに混乱する可能性があります。つまり、 ロックダウンに踏み切ればインフレ率が高止まりすると考えます。2022 年の初め はこの点に注意する必要があります。


また、インフレを短期と長期と分けて考えることも重要です。長期的な基調とし て米国のインフレ率は低位で推移しており、一時的に需給のバランスが崩れた程 度では、方向性は変わらないと考えています。米国の政府債務残高は引き続き拡 大していますが、負債は将来の成長の先食いであり、巨額の負債は将来の成長を 押し下げ、長期的にはインフレ率の低下につながる可能性があります。また、 「格差」は依然として世界中で大きな問題となっており、新型コロナウイルス感 染症が拡大するなか、社会的弱者と強者の間の貧富の差は拡大しています。富裕 層に流入する資金は消費ではなく貯蓄に回される傾向があるため、格差はディス インフレにつながりやすくなります。このようなディスインフレの圧力は重要で、 これにより米国の長期的なインフレ率や長期債利回りを低く抑えられると考えま す。


金融政策の見通しは実に不透明です。不透明な要素のほとんどが短期的な要因で あるため、長期よりも短・中期の米国債券が金利変動の影響を受けやすいと考え ています。



アンドリュー・コーマック キャピタル・グループの債券ポートフォリオ・マネジャー。運用経験年数18 年、在籍年数3 年。キャピタル・グループ入社以前は、ウエスタン・アセット・マネジメントにおいてポートフォリオ・マネジャーとして勤務。Investment Management Certificate 資格保有。ロンドン・オフィス在籍。


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