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「チャイナプラスワン」の波にインドは乗れるのか
スティーブン・ ワトソン
株式ポートフォリオ・マネジャー
ジョニー・ チャン
株式アナリスト
アニルダ・ ダッタ
インド担当マクロ・アナリスト
キーポイント
  • サプライチェーンの再構築と分散のため、グローバル企業の間で中国一辺倒の投資方針を転換する動きが加速
  • このチャイナプラスワン戦略は、今年人口世界一となる見通しのインドなど、さまざまな国々に恩恵をもたらす見込み
  • サプライチェーンの分散が推進されているにもかかわらず、中国への海外直接投資は引き続き高水準。中国の製造インフラ、物流施設、熟練労働力を短期間で他国に移転するのは困難

米アップルが最新モデルのスマートフォン「iPhone 14」のインド生産を開始したと明らかにするなど、「チャイナプラスワン」の流れがさらに勢いを増しています。


グローバル企業はサプライチェーンの再構築と分散のため、中国一辺倒の投資方針を転換する動きを見せています。運用の観点からは、こうした変化が「世界の工場」としての中国に与える影響の度合いとスピードを見極めることが重要となります。また、代替先として世界の供給の一部を担うことになるインドなど他の国々における投資機会も注目されます。


過去30年間、西側諸国の多くの企業は、中国の人件費や生産コストの安さ、国内消費市場の成長を理由に、生産ニーズを満たすために中国に多額の投資をしてきました。しかし、新型コロナウイルスの世界的大流行を契機として世界のサプライチェーンと中国との深い結び付きが改めて鮮明になるなかで、米中対立の激化をめぐる懸念が高まっています。


特に、常に地政学的な緊張が続く台湾をめぐる状況は極めて深刻となっています。その結果、台湾に本社を置く半導体受託製造大手TSMC (台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング) は、米国や日本に新工場を建設しています。


これまでのアプローチからの転換を示すように、米国や欧州連合を含む18ヵ国・地域は2022年7月、サプライチェーン閣僚会合に参加し「供給依存に起因するリスクや重要インフラの潜在的な脆弱性」に対処するため、国際協調を促進し長期にわたって強靭なサプライチェーンを構築する旨の共同声明を採択しました。



スティーブン・ワトソン  株式ポートフォリオ・マネジャー。経験年数35年。現職以前は株式アナリストとして、アジアの不動産及び運輸、欧州の運輸や公益事業の調査を担当。入社以前は、ニューヨークのサンフォード・バーンスタインでアナリストに従事。

ジョニー・チャン  株式アナリスト。アジアのインターネットおよび香港の不動産セクターを担当。以前は、インドのIT企業、欧州の決済技術および日本のテクノロジーハードウェア企業も担当。経験年数24年。入社以前は、J.P.モルガンにおいてアナリストとして勤務。CFA協会認定証券アナリスト。

アニルダ・ダッタ  インド担当マクロ・アナリスト。主にインドのマクロ経済調査を担当。経験年数32年。入社以前は、CLSA Indiaにおいてリサーチヘッド、タタ・スチールにおいてM&A/IRヘッド、インディア・インフォラインにおいて株式リサーチディレクターを務めた他、ING Baringsの副リサーチヘッドとしてプロジェクトファイナンスを行うICICI銀行と協働。