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「ネクストノーマル」時代の債券運用
華村 啓陽
インベストメント・ディレクター
キーポイント:
  • これまで十数年の間、多くの中央銀行は政策金利をゼロ以下まで引き下げ、非伝統的な金融緩和策も次々と導入してきました。低金利が当たり前となり、ボラティリティも低下しました。しかし今後は、インフレ率が以前より高い水準にとどまり、中央銀行が大規模な金融緩和に対して消極的となる市場環境 (「ネクストノーマル」)  が予想されます。
  • 投資家にとっても、ポートフォリオを構成する各戦略のリスク・リターンと役割を見直す局面を迎えています。景気サイクルはより実態経済を反映し、債券利回りは合理的な水準を維持すると予想されるなか、今後、コア債券には「インカムの獲得」と「株式からの分散」という債券本来の役割が期待できると考えます。

新型コロナウイルス感染症の拡大、ウクライナ紛争を発端とした経済活動の混乱、世界的なインフレ高進、大規模な金融緩和政策など、これまで経験したことのない3年間を経て、市場はようやく落ち着きを取り戻しつつあります。


先進国を中心に多くの国々で新型コロナウイルス感染症に関する規制が緩和され、インフレは大半の国でピークを過ぎたという見方が広がっています。インフレが鎮静化すると金融緩和の再開余地も生じることから、金融情勢に不透明感が漂うなかで、ソフトランディングやノーランディングの可能性が注目されています。


新型コロナウイルス感染症拡大前に経験した低金利、低ボラティリティ、リスクテイク意欲といった「ニューノーマル」環境再来への期待は高まっていますが、経済・金融環境が一変した今、以前のような環境へ回帰するとの見方については、様々な角度から再考する必要があると考えます。


「ニューノーマル」の終焉


世界金融危機 (GFC) 以降、金融緩和は市場に安心感を与え、投資家にリスク資産への投資を促しました。政策金利は大幅に引き下げられ、量的緩和 (QE) 、フォワードガイダンス、ターゲット型長期流動性供給オペ (TLTRO) 、オペレーション・ツイスト、イールドカーブ・コントロール (YCC) など、非伝統的な金融緩和策が次々と導入されました。中央銀行は市場のボラティリティの抑制を図り、投資家はリスク資産を積み上げました。その効果もあって、停滞していた景気は回復へと向かいました。


しかし、経済が停滞期から脱しても金融政策正常化は進まず、むしろ新たな問題が起こる度に中央銀行は金融緩和を実施し、正常化への道は遠のきました。そうした環境のなか、現代貨幣理論 (MMT) という従来異端とされていた金融理論も台頭しました。


しかし、MMTは低インフレを前提としている理論であり、昨今の市場環境下ではMMTの有効性が疑問視されています。インフレ率が急上昇したため追加的な財政刺激策の導入は困難となり、中央銀行はインフレ対応を余儀なくされました。ゼロ金利政策の解除、量的緩和 (QE) の解除および量的引き締め (QT) の開始、日本銀行による金融政策の修正などが実施されました。



華村 啓陽 インベストメント・ディレクター。債券運用戦略を担当。経験年数15年。入社以前は、ブラックロックの債券プロダクトストラテジストを務める。


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