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グローバル株式
2022年の展望
ロブ・ ラブレス
株式ポートフォリオ・マネジャー

世界的な新型コロナウイルス感染症拡大を受け、投資においても新たな課題が生まれました。しかし、ファンダメンタルズ (経済や企業の基礎的条件) に対する考え方に変化はありません。企業利益は株価を見るうえで依然として重要です。


キャピタル・グループ・カンパニーズの副会長兼社長を務めるロブ・ラブレスは、「長く続いた上昇相場はいつ調整局面に入ってもおかしくありません。一方で、感染症が結果として市場を下落させなかったことには理由があります。企業収益はかつてないほど注目されています」と述べています。


 


2022年の世界の株式市場をどのように見通しますか。


感染症、経済、市場を切り口に説明したいと思います。感染症は当面存続する見込みですが、経済への影響は次第に低減すると思われます。これは私たちが目にしてきたパターンです。経済の健全性の株式市場への影響度は、債券市場に比べればそれほど大きくはありません。株式市場にとってより重要なのは企業収益であり、多くの企業は感染症拡大をうまく乗り切りました。感染症の経済への影響が低減すれば、景気拡大に伴って企業収益の拡大も見えてきます。


株式市場は、2020年1-3月期に急落後反発し、過去10年間続く上昇軌道に回帰しました。上昇を主導しているのは、引き続き米国のテクノロジー関連株です。いわゆるFAANG - Facebook (Meta) 、Amazon、Apple、Netflix、Google (Alphabet) であり、長期的なトレンドは持続しています。感染症の影響で一時的に上昇を止めましたが、市場の基本的な方向性は変わっていません。


この10年以上、過剰な選好が積み上がっています。通常は、調整局面によって解消されるべき部分です。市場が安定したタイミングで、完全ではないにせよ一定の調整があれば健全な動きと言えます。足元では必要な調整がすでに始まっている可能性もあります。


主要国・地域の経済についての見方を教えてください。


米国と欧州には、堅調な経済成長を期待しています。中国は減速しているように見えるかもしれませんが、先ほど述べたように、経済は必ずしも株式市場のレベルを示す最適な指標ではありません。株式市場は、その市場を支える企業の動向により大きく左右されます。けん引する要因は企業収益の拡大です。


米国の株式市場は過去10年間、年率16%以上上昇しました。これは驚くべき数字です。多くの人々は、量的緩和によってもたらされた流動性の拡大つまりバリュエーション (株価評価) の拡大がその第一の要因と考えています。しかし、それは上昇要因のおよそ半分の寄与でしかありません。この間の米国企業の増益率は、年率7%を超えています。つまり、株価上昇の約半分は増益による寄与であり、残りはそうした収益に対してより高い価値を見出している投資家によるものつまりバリュエーションの拡大です。


下図は、主な株式市場の推移を企業利益とバリュエーションの要因に分解してみたものです。


米国以外の株式市場は、米国の半分程度の上昇率にとどまります。欧州では、企業利益の寄与はほぼゼロです。日本は、バリュエーションの拡大はマイナス寄与ですが、企業利益拡大の寄与はしっかりしています。この2つの市場の上昇率は年率約8%となっています。新興国市場はさらに低い上昇率ですが、大きなウェイトを占めるのが中国であり、分けて考えるべきでしょう。


中国市場は、最近まで米国と同等のペースで上昇していましたが、昨今の様々な産業に対する国家干渉などにより、バリュエーションの寄与は約半分に縮小したうえ、企業利益の拡大は緩やかです。急速に成長している企業もあれば、不動産および金融セクターの企業の多くは損失を計上しており、純利益の成長率は全体としてほぼ横ばいです。


グローバルな視点で成長動向を見ると、米国企業の最終利益が拡大する方向に働いていることがわかります。このことが過去10年間に米国株式市場が他の市場を上回ってきた要因と考えられます。ある程度の過剰な選好は認めらえますが、米国の事象は独特であり、それがこの市場の機会に注目する所以です。一方、日本企業のバリュエーションの拡大が不十分である点はさらなる分析の対象になります。そして、欧州と中国の市場は純粋にバリュエーション拡大が市場の推進要因であり、市場指数の構成銘柄のなかに、割安な銘柄の投資機会に関して精査が必要です。先ほど述べたように、市場全体ではなく個別の企業に注目し、企業の所在地にかかわらず投資機会を探ることが重要です。


 


長期の上昇相場を終わらせるリスクには、どのようなものがありますか。


キャピタル・グループには優れた運用担当者が存在し、彼らから多くを学んできました。そのうちのひとつを例えて言うなら、山火事に直接火をつけたのは何かを特定することは必ずしも必要ではなく、周囲の藪が乾燥している事実を知れば十分であるということです。つまり、直接の原因やタイミングを特定することよりも、結果をもたらす要因や事実を知ることがより重要です。市場について判断する場合は、現在の市場構造や、これまでの上昇幅とバリュエーションについて精査すれば、間違う余地は小さいと考えます。


現在、過剰な選好が見られるのは、上場証券だけではありません。非公開株式市場やいわゆるPIPE (上場企業の私募増資の引き受け) 取引にも見られます。それらが懸念される分野ですが、上場株式市場については極端に懸念する状況にないと考えています。これまで見たように、米国株式はバリュエーションの拡大とともに企業利益の拡大の双方が上昇要因となっています。これは、多くの投資家が考えるより健全だと思っています。


中国の新たな規制環境について、どのように考えますか。


中国は、今や世界第2位の経済大国ですが、現時点の主な問題、そして一部の投資家にとって奇妙にも驚きをもって捉えられるのは、中国が社会主義国だということです。ここ1年、政府はいくつかの産業に対する規制を再び強化しており、影響を受けた多くの企業の株価バリュエーションが急落しています。


この点は一部の投資家を失望させましたが、中国に投資すべきではないと判断すべきではありません。中国経済は急成長を遂げており、特にテクノロジーとヘルスケア分野で多くのイノベーションを生み出しています。中国には、他の国にはない優れたテクノロジー企業が存在します。また、新薬の開発も進んでおり、世界中の疾病治療に大きなインパクトを与えています。つまり、中国をイノベーションと投資の観点から除外することはできません。企業単位で状況を評価し、株価予想を調整する必要があります。


 


さらなる成長とイノベーションの余地はどこにありますか。


FAANG各社と、彼らが強気相場をどのように主導してきたかについては前述のとおりです。Teslaもこのグループに加えてもよいでしょう。FAANGは、高い参入障壁を築き、コア事業以外の領域も合わせ巨額の利益を上げています。複数の強力な成長の柱を有する企業もあります。FAANGはバリュエーションが割高だとの見方もありますが、数年前と比べれば割高感は薄れています。


また、ヘルスケア産業の発展についても期待しています。新型コロナウイルスのワクチンの多くは、20年前に開発されたmRNAのドラッグ・デリバリー・システム (DDS) 技術をベースとするもので、それがついに一般向けの医薬品に採用されたものです。この構造を活用して、複数の新たな治療法や命にかかわる病気の治療薬も開発されることになるでしょう。私たちの人生を変えるものですから、この分野では多くの企業の動向を注視しています。


また、欧州や一部の新興国の企業も忘れてはいけません。彼らは米国と中国から学び、テクノロジー分野では独自の「センター・オブ・エクセレンス (組織横断的研究拠点) 」を構築しています。カナダも同様で、Shopifyをはじめとする多くの企業が独自の革新的なプラットフォームを構築しています。こうした企業は、デジタルやメタバースの分野において素晴らしい製品・サービスを市場に送り出しています。


 


今後1年間のポートフォリオ構築について教えてください。


長期投資家として、私のポートフォリオにおける平均保有期間は約8年です。したがって、全天候型のポートフォリオを構築するよう努めています。米国では信じがたいほどの強気相場となっており、除外することはできません。私の見方は「雨具は買っておくが、今はまだ着ない」ということです。ただ雨具をすぐ手が届くところに準備しておきたいのです。また、低金利環境では、現金のディフェンシブ性は魅力的とは言えません。


強い事業基盤を有し耐久力のある企業、多くの場合配当を支払う企業に着目しています。強気相場が長く続いたことと足元のバリュエーションを踏まえ、慎重姿勢をとっており、潤沢なキャッシュフローを創出する企業へのシフトを進めています。革新的で素晴らしい企業をアナリストが新たに発見した場合、私もポートフォリオに組み入れることもあります。こうしたこともあって、私は自身のポートフォリオを「全天候型」と表現したのです。ポートフォリオは、優良で安全性の高いコア銘柄を中心に構築されていますが、特にデジタル分野におけるこれらの新しい投資機会を見逃さないように努めています。


環境、社会、ガバナンス (ESG) についての考え方を教えてください。


あらゆる場面でESGを目にする機会が増えていますし、その重要性はさらに高まるでしょう。弊社グループでは、ESGを運用プロセスへ統合することにコミットしています。今やすべての保有銘柄に対してESGのスクリーニングを実施しています。株価や運用実績への影響が大きいと考えているため、投資判断にはESGを考慮しています。


弊社グループは、ボトムアップのファンダメンタルズ投資家として、企業と日々対話する役割を担っています。企業には、正しいことをしたい、ガバナンスを向上させたい、従業員の待遇を改善したい、気候変動への影響を最小限に抑えたい、といった思いがあります。これらの課題について、企業は私たちに助言を求めてきます。私たちはこの責任を自覚し、これらを最重要課題として取り組むためにコアとなる強力なESGの専任チームを立ち上げました。


また、ポートフォリオから一部の企業を単に排除するのではなく、資産運用会社がESGの観点から企業を柔軟に評価することが重要です。ESGとは企業を単に排除するためのプロセスではなく、正しい行動を取っている企業を特定すること、また改善中の企業を支援することであると考えてください。


ESGの概念を資産運用業界に導入するにあたって、不安があることも理解しています。政府による新たな規制、規則の追加または開示要件の拡大などが懸念されています。しかし、私は言いたい。乗り越えましょうと。これは重要なことなのです。学ぶべきことはたくさんありますが、前向きに考え、熱意を持って取り組みたいと考えています。


 


最後にひとこと。


第一に、感染症は消えていませんが、恐れる必要はありません。感染症の影響は、時が経つにつれて薄れていくでしょう。第二に、長期にわたる強気相場が11年目に入り、サイクルの終わりが近づいています。何らかの調整が起こる公算が大きいですが、パニックに陥ることはありません。水面下で起こっていることは健全であり、企業業績の堅調な成長に支えられています。


インフレの高進と供給網の混乱が懸念されていますが、世界中の企業に多くの投資機会があるとみています。投資環境も非常に良好です。未曽有の感染症拡大に対して世界が立ち向かったことを誇りに思います。私たちは非常に厳しい状況に置かれたにもかかわらず、創造力を発揮して乗り越える方法を見出したのです。


結論:投資を継続しましょう。売買のタイミングを計ろうとしないこと。私たちがお手伝いします。



ロブ・ラブレス キャピタル・グループ・カンパニーズの副会長兼社長。キャピタル・グループ傘下のキャピタル・リサーチ・アンド・マネジメント・カンパニーのチーフ・エグゼクティブ・オフィサー (CEO) およびキャピタル・グループ・マネジメント・コミッティの議長も務める。キャピタル・グループの株式ポートフォリオ・マネジャーとしても勤務。経験年数36 年。現職以前は株式アナリストとして、グローバルの金属・鉱業関連銘柄及び、メキシコとフィリピン籍企業の調査担当として従事。CFA 協会認定証券アナリスト。ロサンゼルス・オフィス在籍。