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利上げ局面に打ち勝つグローバル債券運用
華村 啓陽
インベストメント・ディレクター

※本レポートは、オルインオンラインセミナーの開催レポートです。


この1年あまりでグローバル債券運用を取り巻く環境は激変し、すでに始まった利上げ局面に打ち勝つにはどのように臨むべきか、頭を悩ませている投資家も多いはずだ。そこで本セミナーでは、コンサルタントの立場からラッセル・インベストメントの金武伸治氏、そして債券アクティブマネジャーの立場からキャピタル・グループの華村啓陽氏を招き、利上げ局面が債券運用に与え得る影響について整理すると同時に、有効な債券投資のアイデアについても議論していただいた。


 


―足もとの利上げ局面を受けて、今後の動向に対しさまざまな見方が交錯している状況です。まずは注視すべきポイントを整理していただけますか。


金武 まず今回の米国の利上げには、①高いインフレ率、②速い利上げスピード、③歴史的緩和からの反転という3つの特徴があります。


高いインフレ率の主要因は、サプライチェーンの停滞によるモノ不足や地政学的リスクによる資源価格高など、供給側から発生しているものが主です。雇用の安定とインフレの抑制を担う中央銀行としては、中立金利を超えるくらいまで利上げしてもインフレを抑制したいでしょうが、そもそも供給側に起因するインフレを、利上げによって解消できるのか? 過度な利上げをすることは景気後退をもたらすのでは? といった点に注意が必要です。


―方で、歴史的緩和からの反転については、今回の利上げは異常ともいえるゼロ金利政策からの正常化に過ぎないということを意味しています。市場が本来の姿を取り戻す過程では、各資産クラスのバリュエーションや市場参加者のセンチメントにばらつきが生じ、地域や債券種別、個別銘柄の精緻な分析能力が生かされる局面です。選別的に投資をしたい投資環境となることを踏まえると、今後は、ベータではなくアルファ、市場全体ではなく銘柄選別、パッシブではなくアクティブ、といった視点で債券運用に臨むことが有効ではないかと考えています。


―利上げによってベースとなる政策金利が引き上げられていくわけですから、債券運用には厳しい局面になるのではないかと想像しがちです。


華村 たしかに政策金利が期間を通じて2%引き上げられた場合、デュレーションが8年の債券であれば16% のマイナスになるため、一見すると利上げは債券投資にとって逆風のように映ります。ただし、利上げは一定期間をかけて行われるものですから、時間をかければかけるほどその間のクーポン収入が蓄積され、プラスリターンをもたらします。


さらに利上げの影響は年限によって異なります。短期ゾーンの債券は利上げの影響を大きく受けやすい半面、10年あるいはより長い超長期ゾーンの債券に関しては利上げの影響は限定的です。実際、2015 年から開始された直近の米国の利上げ局面を振り返ると、36カ月間で政策金利の上昇幅は2.25%でした。ところがその期間の米国10 年金利は約50bps の上昇にとどまっています。つまり、金利上昇によるキャピタルロスも限定的なうえ、36 カ月間にわたってクーポンを積み上げることができたため、期間を通じて見るとトータルリターンはプラスだったのです。


そのうえ、債券へのアロケーションの真価は、利上げの先に直面するリスクオフ局面にこそ発揮されます。利上げ局面で上昇した金利が低下し、債券価格が上昇するため、株式との分散効果が期待されます。特に国債や投資適格社債など相対的に高クオリティの資産はもちろん、株式との相関性が相対的に高いハイイールド社債であっても、リスクオフ局面では一時的にスプレッド拡大によるキャピタルロスは生じますが、相対的に高い水準でのインカムの積み上げによって株式よりも早期にリターンの回復が見込めます。



華村 啓陽 インベストメント・ディレクター。債券運用戦略を担当。経験年数14年。入社以前は、ブラックロックの債券プロダクトストラテジストを務める。カリフォルニア大学サンディエゴ校で国際関係学の修士号、アイオワ大学で国際研究の学士号を取得。